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2012年6月 3日 (日)

海行かば

先日、漸く『万葉集』の全ての歌に目を通し終えました。
まさに「目を通した」だけという感じで、
もし機会があれば、もう少し深く読み直してみたいと思います。
巻第十六〜二十の中で印象に残ったのは、
大伴家持の「陸奥の国よりくがねを出せる詔書をく歌一首」と題する長歌(18四〇九四)で、
この歌の一部分は第二次世界大戦中に軍歌の歌詞に採られました。
そのことを予め知っていたので、どうしても印象に残ったわけです。

陸奥の国より金を出せる詔書を賀く歌一首
葦原の 瑞穂の国を 天降り 知らしめしける すめろきの 神のみことの 御代重ね 天の日継と 知らし来る 君の御代御代 敷きませる 四方よもの国には 山川を 広み厚みと 奉る 御調みつき宝は 数へえず 尽くしもかねつ 然れども 我が大王おほきみの 諸人を 誘ひたまひ 善き事を 始めたまひて 金かも たしけくあらむと 思ほして 下悩ますに 鶏が鳴く 東の国の 陸奥の 小田なる山に 金有りと 申したまへれ 御心を 明らめたまひ 天地の 神相うづなひ すめろきの 御霊助けて 遠き代に かゝりしことを 我が御代に 顕はしてあれば す国は 栄えむものと かむながら 思ほしめして もののふの 八十伴やそともの緒を まつろへの 向けのまにまに 老人おいひとも おみなわらはも しが願ふ 心らひに 撫でたまひ 治めたまへば ここをしも あやに貴み 嬉しけく いよよ思ひて 大伴の 遠つ神祖かむおやの  その名をば 大久米主と 負ひ持ちて 仕へしつかさ 海行かば 水漬みづかばね 山行かば 草す屍 大王の にこそ死なめ 顧みは せじとこと立て 大夫ますらをの 清きその名を いにしへよ 今のをつづに 流さへる 祖の子どもぞ 大伴と 佐伯のうぢは 人の祖の 立つる言立て 人の子は 祖の名絶たず 大王に まつろふものと 言ひ継げる 言の官ぞ 梓弓 手に取り持ちて 剣大刀 腰に取り佩き 朝まもり 夕の守りに 大王の 御門の守り 我れをおきて 人はあらじと いや立て 思ひし増さる 大王の 御言のさきの 聞けば貴み
(反歌三首省略)

「葦原の」〜」君の御代御代(十句)」までは、つまりは「天皇がずっと・・・」という内容ですね。「尽くしもかねつ(十八句)」で一区切りとなり、「然れども」と逆接になるわけですが、以下「下悩ますに(二十八句)」までの内容から、天皇が何をしようとしていたのかがわかります(当時の天皇は聖武です)。金が「たしけくあらむ」と「下悩ます」ほど多く要る、「善き事」。すなわち、大仏です。これは件の詔書が発見されており、確かなことのようです。
「天地の(三十七句)」〜「栄えむもの(と)(四十六句)」までは天皇の一人称で、「遠き代にかゝりしこと」とは、現在の秩父市から純度の高い自然銅が発見され和同開珎を発行したことと、桜井満『万葉集<下>(対訳古典シリーズ)』(旺文社)には書かれていました。ただ、和同開珎発行は708年で、詔書が出されたのは749年なので、「遠き代」という表現はどうなのでしょうか、と素人ながら思ってしまったのですが。
さて、聖武天皇は詔書の中で大伴氏の祖先の言立て(忠誠の誓い、家訓)を引用しました。このことに家持は喜び、歌の中に詠み込んだと言われているそうです。それが「海行かば(六十九句)」〜「顧みは/せじ(と言立て)(七十六句)」で、現代語にすると「海を行くなら水漬く屍、山を行くなら草生す屍となり、大君の辺に死のうと本望、我が身を顧みるようなことはすまい」(伊藤博『万葉集四』(現代語訳付き)(角川ソフィア文庫)より引用。本書は全体的に訳が大胆なところがあると思います。)
言うまでもなく、この言立ての部分が軍歌の歌詞とされた部分です。1937年、信時潔がNHKの嘱託を受けて作曲しました。出征兵士を送る歌として、ラジオの玉砕発表の冒頭曲として、非常に重視されましたが、それだけに戦争の象徴的な存在となっていると言えるでしょう。ちなみに本来の言立ての文句は、最終句が「長閑のどには死なじ」だったとされています(詔書での引用はこちら)。
言立て以降の部分は、忠誠の誓いを重ねるような内容となっています。
しかし家持は、大仏の開眼法要に関する歌を万葉集に記録していません。或いは、彼は一方では防人の気持ちに立った多く歌も詠んでいますから、本当は大仏建立に賛成ではなかったのでしょうか?

参考文献:
桜井満『万葉集<下>』(対訳古典シリーズ)(旺文社)
伊藤博『万葉集四』(現代語訳付き)(角川ソフィア文庫)
Manyoshu バージニア大学Japanese Text Initiativeによるデータベースhttp://etext.lib.virginia.edu/japanese/manyoshu/

訓読は基本的にはバージニア大学のデータベースに従い、一部を上記二書籍を参照して漢字遣い等編集致しました(本当はあまりよくない気が・・・(笑)皆様その点は確かにご了承下さい)。

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